大学部活動での不祥事 弁護士に聞いた「予防のために大学ができることは?」

弁護士が語る、大学部活動での不祥事の予防のために大学ができることは?

2023/01/17 19:00

昨今、大学部活動に関して、部員による器物損壊、準強制性交、大麻・薬物等の不祥事が多く報道されている。

このような事態を踏まえ、大学では、大学自体の取り組みとして、部員等の意識改革・モラルの向上に向けた研修の実施などの動きがあるようだ。



 

■部活動関連での不祥事による大学側の損失

山本健太弁護士

そこで、スポーツに関する第三者委員会(調査委員会)での代理人経験、SNSトラブル・炎上問題の対応経験、大学部活動を含む多くのスポーツチーム・競技団体での研修実績のある、レイ法律事務所山本健太弁護士に、大学部活動での不祥事に対する予防の観点から、大学は何をしておくべきなのかを聞いた。

そもそも、大学部活動に関連した不祥事が起きた場合、大学にはどのようなデメリットがあるのだろうか? 山本弁護士は以下のように語る。


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①ブランド力の低下


大学部活動に関して不祥事が発生すると、大学名、部活動名がメディアにより報じられます。その結果、大学のイメージダウン・ブランド力の低下、ひいては、大学の受験者数の減少等にもつながる可能性があり、大学としては大きなダメージを負う可能性があります。


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②優秀な人材の確保が困難に


大学は、その大学イメージ・ブランド力の向上のみならず、部活動を通じた学生等の一体感の醸成のため、部活動に力を入れていることが多くあります(私も、卒業からかなり時間がたちますが、出身大学が55年ぶりに箱根駅伝本線への出場権を獲得した際には、自分のことのように嬉しく感じたのを覚えています。)。そのため、大学としては、部活動に対して、特待制度・推薦枠を確保するなど部活動の強化に力を入れていることも多いと思います。

他方で、最近では、ネット・SNSの発達もあって、大学進学を考える子・その保護者は、進学に関する様々な情報を入手しやすく、様々な進学先(海外留学なども含みます。)を候補に挙げながら、より良い進学先を選んでいく時代になっています。

とくに、大学でもスポーツで活躍することを望む子・その保護者は、大学を卒業した後にプロになることや、社会人になっても競技を続けることを視野に大学を選択したいと考えている方も多く、その際に、部活動の不祥事がメディアで報道されると、それだけで、その大学への進学を止めてしまう可能性もあります(部活動での不祥事が発生すると、一定期間、その部活動の全部員の全活動自体を停止する措置が取られることもあるため、競技ができない期間のことを考えると、その大学への進学を止めるというケースもあるでしょう。)。



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③不祥事対応費用・労力


そして何よりも、不祥事が発生した場合、大学側としては、第三者員会の設立・調査、再発防止策の検討、再発防止策の実施など、多くの費用と労力を費やすことになります。

特に、第三者委員会は、弁護士など有識者を加えて行われ、場合によっては、その費用だけで、数百万円~数千万の費用がかかる可能性もある印象です。また、メディアで当該不祥事が報道された場合、大学は、メディア対応にも多くの費用や労力を費やすことにもなります。



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④法的責任

例えば、部員間や指導者・部員間でハラスメント等の問題が生じた場合には、大学側としても、それに対する法的責任を問われる可能性も考えられます。


■大学としてはどのような事前予防策を講じておくべき?


以上のデメリットを考えると、大学としては、可能な限り、不祥事を予防・防止するための対策を、各部活動に任せるのではなく、自ら講じておく必要があります。

学生は、まだ社会経験・正しい知識が乏しく、その結果、つい「ノリ」で反社会的な行動を行ってしまうことが考えられます。そのため、部員等の意識改革・モラルの向上に向けた、正しい知識を獲得するための研修を定期的に開催していくことは、必須であり、大学としては、まずはこのような研修の実施を検討していただくと良いでしょう。

特に、身近な娯楽にもなっているSNSの利用に関して、誹謗中傷・炎上等ついての正しい知識、スポーツにおいて近年問題視されることが増えているスポーツ・ハラスメントに関する正しい知識、その他薬物等の犯罪に対する法的な理解などについての研修の機会を設けることは重要といえると思います。

研修に関しても、より効果的な研修を実施するためには、単に一方通行の研修だけでは意味がなく、グループワークや双方向での研修を取り入れて、学生等が自ら考える研修を行っていく必要があります。


最後に、山本健太弁護士は、このようにまとめる。


■山本弁護士のまとめ

そもそも、スポーツの本質的価値は、「楽しみ」という点にあります。しかし、上述のとおり、大学部活動に関する不祥事は、その部活動の部員のみならず、大学にとっても、「百害あって一利なし」であり、このスポーツの本質的価値とは真逆にあるものです。

また、近年、スポーツに関しては、ステークホルダー(利害関係者)も多く、SNS等の発達により注目度も上がっています。そのため、一度不祥事が発生するとそのダメージは大きく、失った信頼等を回復することは簡単ではありません。

そのため、不祥事を予防するのための対策を講じておくことは、大学にとって、とても意味のあることだと思います。

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(取材・文/Sirabee 編集部・熊田熊男

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