「キモいおじさん」「同性婚気持ち悪い」 いじめの裏に常にある”キモい”の暴力

炎上が続く「キモいおじさん」騒動。愛知県議の「同性婚気持ち悪い」発言も問題に。

2023/01/29 15:45

キモいおじさん論争

インターネット、中でもとくにソーシャルメディアを舞台に、「キモいおじさん論争」がとどまるところを知らない。「キモい」は「気持ち悪い」の略語で、生理的な嫌悪感をむき出しにした攻撃的な言葉。

現代の若者言葉というよりは、1990年代くらいからは若い世代を中心に広く使われていたため、40〜50代以下の人たちは学生時代から耳にしたことがあるかもしれない。


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■「キモいおじさん」6割がヘイトと認識

「キモいおじさん」「キモいおばさん」という言葉の刃が飛び交うインターネットの現状に対して、ひろゆきこと西村博之氏も、「『キモイおじさん』『キモイおばさん』と言い争うのは”マシな世界”とは思えないおいらです 」と懸念を表明。

Sirabee編集部でも、6割の人が「キモいおじさん・キモいおばさんという言葉はヘイトスピーチだと思う」と回答した調査結果を先日紹介した。「キモいおじさん」「キモいおばさん」という言葉について、評価の差はほぼ見られなかった。

キモいおじさん・キモいおばさん

しかし、騒ぎはさらに拡大。26日、愛知県議会議員が、Facebookで「同性婚が気持ち悪いと言って何がいけないんですか」「世の中には同性婚を気持ち悪いと思う人がほとんど」などとコメントしたことが報じられた。

この議員は、昨年10月にもSNSで「同性結婚なんて気持ち悪いことは大反対」などと投稿して波紋を拡げ、当時所属していた自民党を離党。次期選挙に出馬しないことを発表していた。


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■「おじさん・おばさん」は差別?

「キモい」といった言葉を他者にぶつける行動について、社会がきわめて厳しい目で見ていることを示すもうひとつのデータがある。

Sirabee編集部は、「キモいおじさん・キモいおばさんはヘイトスピーチだと思うか」の調査と同時に、「おじさん・おばさんという言葉は差別的だと思うか」という調査を実施した。

「おばさん(おじさん)じゃなくて、お姉さん(お兄さん)と呼んで」などと言う人がしばしばいる。そこで、「キモいおじさん(おばさん)」における「おじさん・おばさん」の部分が差別にあたると考えられているかを確かめるためだ。

おじさん・おばさん

その結果、「おじさん・おばさんという言葉は差別的」と考える人は1割台にとどまり、そう感じる人はたしかに存在するものの、「キモいおじさん・おばさん」という言葉をヘイトスピーチだと認識した人と比較すると、圧倒的に少数であることがわかる。


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■差別性は「キモい」にあり

上記のデータからも、「キモいおじさん・おばさん」という言葉を社会が危険で有害なものと認識しているのは、「キモい」という言葉の暴力性による部分が大きいと考えてよさそうだ。

そして、「同性婚は気持ち悪い」という発言に対しても、おそらくそれに近い評価となるのではないだろうか。

「キモいおじさん・おばさん」は、性差別・年齢差別(エイジズム)・外見差別(ルッキズム)が絡み合った差別のトリプルコンボ。「同性婚気持ち悪い」はLGBT当事者への激しく差別的なメッセージだ。


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■いじめと密接に関連する「キモい」

「キモい」という言葉を人間に向けることに対して、世間の声がきわめて批判的である背景には、「いじめ」の問題が影響している可能性がある。

いじめを苦にした痛ましい自殺を報じた記事やニュースの多くに、被害者が加虐者たちから「キモい」という言葉をぶつけられていたことが報じられている。

・学校貸与のタブレット端末に「うざい」「きもい」「死んで」…小6女児が遺書残し自殺(読売オンライン/2022年9月14日)


・「キモイ」「うざい」「死ね」「ガイジ」……17歳の高校生を死に追いやった教室で“日常的に飛び交っていた言葉”とは(文春オンライン/2022年8月20日)


・加害者32人、「きもい」「うざい」「死ね」 品川中1男子「いじめ自殺」壮絶報告書(JCASTニュース/2012年11月6日)


いじめにおいて「キモい」は、常にいじめっ子がいじめられっ子にぶつける言葉であり、その主観的かつ一方的な評価を覆すのは非常に難しい。また、弱者が強者を「キモい」と評することはほとんどなく、「キモいと言える側・言われる側」の力関係は固定化されている。

クラスや集団における強者は、運動が苦手/家が裕福でない/アニメや漫画などが好き/太っている…など愚にもつかない理由で弱者を「キモい」と断罪し、自らの主観を声高に叫ぶことで集団の共有認識に変えていく。

「キモい」という言葉は、人を死に追い込む力のある卑劣で残虐な暴力なのだ。


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■4割にいじめられた経験

Sirabee編集部が2020年に全国10〜60代男女1,789名を対象に実施した調査では、全体の43.2%が「過去にいじめを受けた経験がある」と回答している。その中には当然のように「キモい」という言葉の暴力があったはずだ。

昨今のソーシャルメディアを汚染している「キモい(気持ち悪い)」という罵声の応酬を目にして、トラウマをえぐられたように感じた人も少なくないのではないだろうか。

いじめ

こうした様々なデータからも、「キモい」「気持ち悪い」といった言葉を他者に向ける人たちやその活動が、支持を拡げる可能性は限りなく低いだろう。

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(文/Sirabee 編集部・タカハシマコト

【調査概要】
方法:インターネットリサーチ
調査期間:2023年1月18日~1月21日/2020年2月21日~2月26日
対象:全国10代~60代男女1,000名/全国10代~60代男女1,789名(有効回答数)

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